読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

東京インスパイア

都内で働く高卒リーマンの記録

【読書】狭小邸宅を読んでみた感想

 

    f:id:satril:20160914085615j:plain

 

前回、不動産の営業マンに転職したがキツくて三日で退職した話しをしようと思うという自分の実体験をもとにしたブログ記事を UP したら、たくさんの方々に見ていたただきまして、今まで日に6P~10PVだった『東京インスパイア』ですが、1日で2,000PV〜3,000PV まで上昇しました!

www.tokyo-inspire.com

いやー、改めてインターネットの世界はすごいですね。こんなにも拡散して勢いよく広まっていくのを目の当たりにすると、長文でしたが記事を書いたかいがありました。(結構、10,000文字以上書くのって大変なんですよね)

 もっとも、今では再び1日10PV〜20PVほどに戻っておりますが、それでも自分としては大変嬉しいことです。ただし、もう一度読み返してみるとライティングスキルがまだまだ低いと感じましたので今後も精進していきたいと思います。

 さてさて、話を戻して自分が今回の記事を書こうと思った、そもそもの背景は新庄剛さんの『狭小邸宅』を読んだからなんですよね。ちなみにこの本は第36回すばる文学賞に受賞しております。

正直な話、私が書いたブログの内容なんて『狭小邸宅』の世界と比べると子猫みたいなもんだということが、よく分かります(笑)

構成

本編は179ページで構成されている。特に目次などはなく、淡々と物語が続いていく。

あらすじ

不動産屋という仕事に特にこだわりも思い入れもなかったが、他に興味を寄せる仕事ややりたいことがなく、苦し紛れに入社した松田。胃痛を覚えるようなノルマ、体を壊さずにはいられないほどの激務、挨拶代わりの暴力。

そんな毎日に辟易していた松田はとうとう課長にも辞職を促せられる。しかし、ある日運良く家を売ったことをきっかけに松田の日常が劇的に変わり始める。周囲の評価や自分自身の成長していく松田の意外な結末は...

ここは見てほしいところ

『狭小邸宅』は見て欲しいところがたくさんありすぎて、1つに絞ることができないのだが、あえて挙げさせてもらうとすれば、2つあります。1つは冒頭で秋元さん(女性)という顧客を松田がフォージーハウスに連れて帰るところですね。

いわゆる、来社と呼ばれるもので、営業マンは自分が物件を案内したお客様を店舗まで案内しないといけない。なぜなら、営業マンがヒアリングをしても、顧客の事情や営業マンの不手際などで細かな要望まで把握できないことがよくあるからだ。

そのような背景で、見込み客をロストすることを懸念して、営業マンは来社させたお客様を上役に引き継ぎ、上役は営業マンの見逃した顧客の真意を見極め、さらに隙を見せる顧客に対しては一気に契約までクロージングするのが目的。

松田は、秋元さんに対して幾つか物件を紹介するのだが、秋元さんのリアクションはかなり薄い。秋元さんの希望は自由が丘なのだが、秋元さんが期待している理想の物件とはほど遠く、「チラシに載ってるから期待したんだけど、そうでもないのね」と完全に諦めた口調で独り言をつぶやく。

こういう状態になった秋元さんに松田は、「せっかくお越しいただいたのにご希望に添えずに申し訳ありませんでした。実は、チラシに掲載されていたものはすごく一部なんです。自由が丘も含め城南エリアの未公開物件がまだまだあります。この後、少しだけお時間いただいて店舗で詳しくお話しできればと思っているんですが、よろしいですか?」と逃げ道を無くす。

もちろん秋元さんは何色を示すのだが、松田も引かない。だが、秋元さんも渋ったまま意思を曲げない。そんな押し問答を何度か繰り返した挙句、松田はなりふり構わず懇願して、道行く周囲の人間の視線を浴びながらも腰を折って、頭を下げた。

これには秋元さんも呆気にとられてしまい、来社することになる。秋元さんは来社途中の車内で、「大変なのはわかるけど、もうちょっと言い方ってものがあるでしょ」っと松田に対して呟いた。

松田はやっとの思いで、秋元さんの来社に成功して大山課長に引き継ぎ自分の営業ルームに戻るのだが、その後引き継いだ大山課長に秋元さんがどうだったか反応をうかがうのだが、「どうでしたかじゃねぇよ、この野郎。てめぇ旦那の仕事訊いたのかよ、あっ?!自営業じゃねぇかよ。自営業は客じゃねぇ、だから明王出た奴は使えねぇんだよ」っと一蹴されてしまう。

自分はこの場面を見てて、松田が可哀想というよりも松田の鈍感さが招いた災難だったと思うんです。もっとも、来社という最低限やるべきことに目がいき過ぎて、顧客の質を選別できなかった。引き継がれた、大山課長からすると「蓋を開けてみたら、全然ダメ」みたいお客を呼んできた松田に激怒するのは当然です。

ただし、なぜ災難という言い方をしたかというと、このようなことを別の会社でやった場合は「松田くん、来社までの対応ありがとう」と一言もらえていたかもしれないし、いわば褒められるべき行為だったかもしれないとも思うのです。

でも、不動産屋の営業マンからすると、そんなことより、いかにして、家を買う客を殺せるかというところが大事であり、それ以外は興味ないのですから、松田がやっている行為はハッキリ言って意味のないことだということですね。

全然、話しは変わるが自分が不動産屋に勤めていた時に先輩に言われた、「時間を与えてもらったんだからそれまでに完遂してないのであれば、何もやってないことと同じだ」と言われたこと本質は同じだなと思いました。  

そして、もう2つめは豊川部長という存在ですね。

相変わらず家を売ることができない松田は恵比寿の部署から駒沢に異動になるんですが、その部署で豊川部長という今までの暴力的な上司とは違うタイプの上司と仕事するようになります。

駒沢に異動になっても松田は以前と同様に売れない日々が続き、そのたびに豊川部長に辞職するように言われます。それでも松田は辞めない。そんな松田に対して豊川部長は「お前、自分のことを特別な人間だと思っているだろ」っともっとも言われたくない一言を言われますが、それでも苦し紛れに松田は否定します。しかし、豊川部長は畳み掛けるように重い言葉を残します。 

「いや、お前は思っている。自分は特別な存在だと思っている。自分には大きな可能性が残されていて、いつかは自分は何者かになるとどこかで思っている。俺はお前のことが嫌いでも憎いわけでもない、事実を事実として言う。お前は特別でも何でも無い。何かを成し遂げることはないし、何者にもならない」

この言葉を聞いたときに、自分自身にもグサッと何か冷たいものが刺さりましたね。作中の松尾や自分も含め、こんな気持ちで働いているサラリーマンは絶対に多いと思います。

感想

『狭小邸宅』は現代を生き抜く20代後半〜30代前半のサラリーマンの本質をついた作品だと個人的には思っております。自分も現状、この世代にどハマりなのですが、この世代の生き様って、その後の人生が大きく左右される時期でもあると思います。

『理想と現実』とはよく言ったものですが、この時期までは理想というものに左右されて生きている真っ只中でもあるので、当然ですが心のどこかで現状の生活には満足できていない気持ちが存在しているのではないかと思います。 

そして、その気持ちの大半のものは『金』があれば解決できるとも思ったりするものです。なので、この時期の者達は『金 = 理想』と分かりやすい構図を描いてしまうので、安易な行動をとってしまうのではないかなと思います。実際に自分はそのような安易な気持ちで転職して失敗しております。

ただし、今となっては失敗してよかったなとも思っております。なぜなら、もう二度と失敗しないようにしようと心の底から思うようになったからです。『狭小邸宅』の松田もある日家を一軒売ったことから自分の価値観が大きく変わり始めます。身なりや仕事に対しての意識など、以前ではブラック企業にずるずる勤めている自分に嫌気がさしていたのですが、変化した後は会社の悪評はともかくとして、自分自身が変化するために何も努力していなかったことを認識するようになっていきます。

そして、気づくと昔の自分が反面教師となってしまって、もう戻れない、もっと言わせてもらうと戻るらないように日々を努力して生きるようになっていくのです。

こちらを自分自身の人生に置き換えると、不動産からブライダルに転職した自分は最初の3ヶ月くらいはダメダメで愚痴ばかり言って働いていたのですが、ある日社内システムを改善するよう命じられて、外注先の企業とやりとりをしていくうちに日常が大きく変わっていきました。

日中は営業をしてメール業務や問い合わせ対応に追われていて、夜中はシステムの改善に追われる日々。休みなんか月に1日か2日ほどしかなくて、いつも終電で帰る日々。終電で帰れない日は社用車で帰っておりました。

今までの自分だったら、適当にやって途中で投げ出しても「自分は営業だし、システム系は専門担当じゃないから」っと言って逃げていたかもしれなが、あのときはなぜかがむしゃらに頑張れました。

周囲の評価や売上などが影響してきたのもありましたが、それ以前に「もうあんな中途半端な自分は嫌だ」っと心のどこかで思っていたのかもしれません。そして、今の心境だから言えることとしては、理想にしがみつくような生き方よりも現実を見据えて今自分にできることを一生懸命にやったほうがいいっと心の中で思うようになりました。

現にこのときの経験が生きて、今では IT 業界に転職することができました。当時は全く、PC なんかも使うことが出来なかったのですが、今ではその辺のサラリーマンよりも使いこなすことができるのではないかと思っております。

それともう一つ、自分自身を変えるためには客観的な意見を取り入れることが大事だということ。見どころでもお伝えした、豊川部長の重たい一言などがいい例で、他人から言われた言葉などをいかに傷ついたとしても、自分自信の人生の糧にして、客観的に自分自身を見つめることを常に意識することが大事だと思います。

大人になればなるほど、誰からも指摘されなくなります。その境目は大体、30代前半くらいまででしょうか。サラリーマンだろうが、自営業だろうが、誰からも指摘されなくなると自分自身の考えを疑わなくなり、客観的な指摘に対して否定的になってしまいがちですので、そうならないためにも客観的な意見は取り入れることは大事だなと思っています。

最後に『狭小邸宅』を改めて検索すると、なぜかある企業名がその次に候補キーワードとして出てきました。

f:id:satril:20160917192911p:plain

普通にテレビでも、ある意味キャッチーな CM が放送されているだけに、あの有名俳優が犬の姿になっているのも何か裏があるのではないかと、下衆な勘ぐりをしてしまうのは自分だけでしょうかね(笑)

いずれにせよ、現代を生き抜くサラリーマンの方には是非、オススメしたい作品ですので、お時間に余裕がある方も、一度読んだことがある方も何故か一気に読破してしまうので『狭小邸宅』を読んでみてください。